ニッシーブログ
2008.1.22
道路特定財源について考える (クリックすると表はきれいに見えます)
1.揮発油税等の道路特定財源は、道路整備の目的のために徴収される税金です。確かに道路整備を減らして、道路特定財源の暫定税率を廃止すれば、ガソリン1ℓ当たりで約25円の価格が引き下げられることになります。しかし、国・地方の税収は2.6兆円減少し、特に地方の税収が1.6兆円減ることになります。高騰するガソリン価格について、少しでも引き下げたいのはやまやまで、そのための知恵を出したいと思いますし、あらゆる努力をしてまいりたいと思いますが、なかなか複雑な問題です。
2.まず、政府・与党は原油価格高騰対策として、
(1)20年度予算、19年度補正予算合わせて2,100億円以上の予算を計上した他、@生活にお困りの家庭に灯油券を配布する際に、その半額を国の交付税措置により対応することや、A高速道路料金の引き下げによるユーザーの負担軽減を図るなどの対策を講じるとともに、
(2)原油の高騰を抑えるための投機マネーの調査、OPECなど産油国との原油増産交渉などの国際的な対応を図っています。私も中東諸国のみならずアフリカ・南米などの新たな産油国を何度も訪問し、日本との信頼関係構築に努力を重ねています。
3.次に、仮に道路特定財源の暫定税率が廃止されると、地方の道路整備、地方財政に対して非常に大きな問題が発生します。
(1)暫定税率相当の税収は、(国の財源ばかりでなく)地方の市町村の財源にとって固定資産税、住民税に次ぐ貴重な独自財源であり、特に小規模の市町村にとっては重要です。暫定税率が撤廃された場合には、歩道の整備、道路の改修、ガードレール工事などが止まるだけでなく、予算全体の組み替えが必要となり、福祉や教育の予算にしわ寄せがおこり、市町村の財政にとって大打撃となります。
(ちなみに、私の地元の4市で、30億円近い減収になります。財政難のこの状況において、この金額は、極めて大きなウェートです。)
現に、昨日(1/21)には、知事会、市長会などの地方6団体が、暫定税率の維持を訴え、民主党の対応を痛烈に批判しました。
(2)民主党の主張する『道路整備は必要で、今までどおり行うが、財源は心配ない』というのでは、現在の国、地方の財政状況を考えると無責任な議論と言わざるを得ません。民主党は『国の直轄事業の地方負担分をなくす』としていますが、その分国の負担が増えるわけで、その財源はどうやって手当するのでしょうか。もちろん必要でない道路整備を見直す努力も徹底して行わなければなりませんが、特に地方にとって大事な財源となっていることを忘れてはなりません(写真の表)。
4.また、民主党は、特定財源を廃止し、「一般財源化」(何でも使えるようにする)すべきと主張しています。私も、特定財源や特別会計をできるだけ減らし透明性を増すべきとの主張を党内で行ってきており、そのような方向で議論を進めるべきだと考えますが、実際、道路特定財源についても、道路整備を上回る金額(平成20年度予算では2,000億円超)について、既に「一般税源化」しています。
しかし、この道路特定財源のうち、国税分についてすべてを「一般財源化」し、何にでも使えるようにすることには「受益と負担」の関係から大きな問題があることも指摘する必要があります。すなわち、この道路財源の負担は、車社会の「地方」の人ほど重いのです。10月30日のブログ(こちら)でも示したとおり、東京の一世帯当たり平均のガソリン支出が1.6万円に対し、全国の町村の平均が約6倍の10万円です。したがって、この負担による予算を「一般財源」として何にでも支出していいこととなれば、財源が不足している「年金」や「福祉」に使われることとなり、人口の多い東京などの「都市部」の人たちのために使われることになるわけです。つまり、「地方」の人の負担で、「都市部」の社会保障を拡充することとなります。やはり、税を負担する人たちのために支出することが税制の基本(「負担」と「受益」の原則)で、これまでは道路がなかった地方に道路を整備するために車に乗る方がガソリン税として負担をしてきたわけです。このような論点についても指摘しておきたいと思います。
5.さらに、現在、世界的に、地球温暖化問題をはじめとする環境問題の重要性が言われ、本年の洞爺湖サミットに向け大きな盛り上がりを見せております。ヨーロッパ諸国においては、ガソリンなどに税を課すことによってその価格を上げ消費を抑制することによって、CO2(二酸化炭素)の排出量をおさえ、地球温暖化を防ぐ環境税(炭素税)が導入されています。そのためもあってヨーロッパ主要国のガソリン価格は現在1ℓ当たり230円前後まで上昇しています。『環境』という点からいうと、ガソリン価格にしめる税金の割合が低い日本において、ガソリン価格が150円を超えたからといって減税をすることは地球温暖化対策に逆行すると言われる可能性があり、今年のサミット開催国として、世界の「環境対策」を取りまとめる立場の我が国にとって辛いことになります。
6.(1)いずれにしても、国民生活への影響を考えれば、少しでもガソリン価格を引き下げたいとの思いでありますが、暫定税率を廃止することは、このように決して単純な問題ではありません。上述のとおり、財源に無責任な民主党ではありますが、参議院の第一党であり、「高速料金値下げ」など共通の施策もあります。是非、自党の党利党略を超えて、国民生活、地方財政などを総合的に判断し、混乱を生ずることのないよう、議論に応じて頂きたいと思います。
(2)特に、本年3月31日に期限切れとなる暫定税率延長の法案について、参議院でむやみに審議を引き延ばすことにより、4月1日を迎えれば、一時的にガソリン価格が25円下がり、衆議院で3分の2条項で再可決すれば、何週間後かに再び25円上がる、という事態になり、この間にガソリンの買占めに走ることも想定されます。参議院(民主党)の意思として否定をするなら、堂々と否定の意思を示して頂き、国民生活の混乱を回避しなければなりません。この混乱に乗じて首相の問責決議を提出し、あわよくば衆議院の解散・総選挙に持ち込もうとする民主党の姿勢は、国民生活を無視した党利党略と言わざるを得ません。
(3)もちろん、自民党としても、民主党の主張にも真摯に耳を傾け、ガソリン価格下げのために何らかの方策がとれないのか、例えば、過去に安い価格で積み上げてきた「備蓄」の放出の検討をはじめとして、あらゆる知恵をしぼることが大事です。今後、国民生活の安定を第一に、与野党間で接点を見つけるべく努力をしてまいりたいと思います。
皆様方の幅広いご意見を頂ければ幸いです。
一覧
HOME
(C)yasutoshi.jp