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ヨーロッパ出張(その②:「セルビア編」)
1.旧ユーゴスラビアは、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、コソボと多くの国に分割・分裂したが、バルカン諸国と呼ばれ、その中の一つセルビアに今回初めて訪問した。
飛行機から見るセルビアの首都ベオグラードは「白い街」の意のとおり、ドナウ河にサヴァ川が合流する両岸にできた美しい街である(写真①、②)。2つの河の合流点での夕日は、特に素晴らしかった()。

2.空港から都心に向かう両側には小麦畑が広がり()、ハンガリーまで続く大平野は、農業大国としての可能性も感じさせる。時々見かける赤い花の群生は「ケシ」の花だそうだ()。アヘン、ヘロインの原料であるが、この程度では量産できないという。

3.今回の訪問の最大の目的は、ジェーリッチ副首相との再会である。ジェーリッチ氏が4月17日に訪日して会談して以来(4月17日ブログ参照)、約1ケ月ぶりの面談であり、親近感が極めて強くなった。今回は、ジェーリッチ副首相から、二つの経済協力(円借款)についての正式な要請があった。ニコラ・テスラ火力発電所の排煙脱硫装置の事業と、ベオグラードの汚水処理事業である。この他にも多くの話題について意見交換を行った()。二人の記者会見の様子はテレビでも大きく報道された()。

4.また、33才のイェレミッチ外務大臣とも、コソボ承認を巡る法的問題や、セルビアのEU加盟の可能性等について、忌憚なく議論を行った()。大きな可能性を感じた若手政治家であった。

5.しかし、そのEU加盟やNATO加盟については、ちょうど首相府や外務省の前のビルに、NATO空爆(1999年)の跡がそのまま残されていたし()、なかなか一筋縄ではいかない難しさも感じた。
しかし、セルビアは近代化、資本主義化、民主化を急速に進めており、街中には大きなショッピングセンターも建ち()、また、地場の国営・自動車産業の「ザスタバ」()は民営化され、元気なイタリア「フィアット」が買収を決めた。他の多くの国営企業も民間に払い下げを行っているし、あの「フィアット」が進出(買収)を決めたことは、セルビアにとって大きなPR材料となっている。

6.日本との関係は長い。日本からの援助は多岐にわたっており、「日の丸」の付いたバスは、人口約160万人のベオグラード市内を約100台走っており、「ヤパーナツ」と呼ばれ、市民の通勤・通学の足として重宝されている()。私が訪問した日本語を教える高等学校でも、多くの若者が熱心に日本語を勉強していた。

セルビアは、既に1人当たりGNPが4000ドルを超え、円借款も環境や人材育成などに限られる。バイデン米国副大統領がつい先日訪問し、EU加盟に向けた話も前進するようだ。将来大きく成長する可能性のある国の一つである。